科目名:人材投資促進税制による税額控除

21/11/20現在、古い情報となっています
 
 平成17年度の税制改正により、企業の教育訓練費支出に対して税額控除を受けることができる人材投資促進税制が新設されることになりました(措置法42の12措置令27の12)。過去の教育訓練費の平均を、上回った場合に税額控除を受けることができます。ただし、青色申告を提出する法人に限ります。
 平成17年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始される事業年度(3年間の時限措置)となっています。
 

人材投資促進税制の概要

 人材投資促進税制の概要は、大企業の場合基本制度が適用されます。中小企業者等の場合は、基本制度特例制度の選択適用が可能です。
 @基本制度
 損金に算入される当期支出の教育訓練費が、直前2事業年度の損金に算入された教育訓練費の平均額を超える場合に、超える額(増加額)の25%相当額の税額控除が認められます(ただし、当期の法人税額の10%が上限)。
 A特例制度
 損金に算入される当期支出の教育訓練費に、一定率を乗じた額の税額控除が認められます(ただし、当期の法人税額の10%が上限)。
 一定率とは、
(1)教育訓練費増加率が40%以上の場合 20%
(2)教育訓練費増加率が40%未満の場合 教育訓練費増加率×50%
になります。
 教育訓練費増加率とは、当期の教育訓練費の額からその直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を控除した金額のその平均額に対する割合率です。
 
人材投資促進税制(大企業)

 (例)教育訓練費 前々期1,000,000円 前期800,000円 当期1,600,000円
 直前2事業年度の教育訓練費の平均額は、
 (1,000,000円+800,000円)÷2=900,000円
 教育訓練費増加額は、
 1,600,000円−900,000円=700,000円
 税額控除額は、
 700,000円×25%=175,000円(ただし、当期の法人税額の10%が上限)
 
人材投資促進税制(中小企業)

 (例1)教育訓練費 前々期1,000,000円 前期800,000円 当期1,600,000円
 直前2事業年度の教育訓練費の平均額は、
 (1,000,000円+800,000円)÷2=900,000円
 教育訓練費増加額は、
 1,600,000円−900,000円=700,000円
 教育訓練費増加率は、
 700,000円÷900,000円=0.777>0.4
 税額控除額は、
 1,600,000円×20%=320,000円(ただし、当期の法人税額の10%が上限)
 
 (例2)教育訓練費 前々期1,000,000円 前期800,000円 当期1,200,000円
 直前2事業年度の教育訓練費の平均額は、
 (1,000,000円+800,000円)÷2=900,000円
 教育訓練費増加額は、
 1,200,000円−900,000円=300,000円
 教育訓練費増加率は、
 300,000円÷900,000円=0.333<0.4
 0.333×0.5=0.166(小数点以下3位未満切捨て)
 税額控除額は、
 1,200,000円×0.166=199,200円(ただし、当期の法人税額の10%が上限)
   

中小企業者等とは

 中小企業者等とは「措置法42の4Fに規定する中小企業者に該当する法人で、青色申告書を提出するもの」とされています。これは、中小企業技術基盤強化税制の対象法人と同一であり、具体的には、措置令27の4Cに規定されています。次の@またはAとなります。
 @資本もしくは出資の金額が1億円以下の法人(ただし、発行株式総数または出資金額の1/2以上が同一の大企業(資本金1億円超の法人)、もしくは発行株式総数または出資金額の2/3以上が大企業の所有に属している法人を除く)
 A資本もしくは出資を有しない法人のうち従業員の数が1,000人以下の法人ということになります。
 

教育訓練の対象者の範囲(使用人に限定)

 教育訓練費を支出する「人」の範囲については、「法法2@十五に規定する『役員』と『政令で定める特殊の関係のある者及び法人の使用人としての職務を有する役員』を除く」とされています。
 よって、以下の通りとなります。
○対象者の範囲は、当該法人の使用人
○使用人とは、正社員、契約社員、パート・アルバイト、請負社員、派遣社員その他当該法人から対価を受け取って業務を遂行する者をいいます。
○ただし、以下の者は対象外となります。
 @当該法人の役員A当該法人の役員と特殊な関係にある者(=親族)
○なお、内定者等の入社予定者は、対象外です。
 

対象となる教育訓練費用の範囲

 税額控除の対象費用と具体例は次のとおりです。
 
@外部講師謝金(法人が自ら研修を行う場合):社外講師・指導員に支払う講師料・指導員料
 (対象費用)
○法人がその使用人に対して、外部から講師または指導員(以下「外部講師等」)を招聘し、講義・指導等の教育訓練等を自ら行う場合であること。
○外部講師等に対して支払う報酬その他の費用であること。
 (対象外費用)
◆当該法人の役員または使用人が、当該法人の教育訓練等における講師等として講義・指導を行う場合の当該講義・指導期間中に支払う人件費(講師料、日当を含む)、交通費、旅費は対象外。
 
A外部施設等使用料(法人が自ら研修を行う場合):研修を行うために使用する外部施設・設備等の借上料、利用料
 (対象費用)
○法人がその使用人に対して、他の者が所有する施設、設備その他資産(以下「施設等」)を使用または賃借して、教育訓練等を自ら行う場合であること。
○施設等の使用または賃借に要する費用であること。
 (対象外費用)
◆当該法人が所有する施設等の使用に要する費用(光熱費、維持管理費等)
◆当該法人の施設等の取得に要する費用(減価償却費等)
 
B研修委託費(他の者に委託する場合):講師、教材等を含め研修の一部または全体を外部教育機関等へ委託する場合の費用
 (対象費用)
○法人がその使用人の職務に必要な技術・知識の習得または向上のための教育訓練等を他の者に委託して行う場合であること。
○教育訓練等のために当該他の者に対して支払う費用(講師の人件費、教材費、施設使用料等の委託費用)であること。
 
C外部研修参加費(他の者が行う教育訓練に参加させる場合):社員を外部の研修プログラムに参加させる場合の受講料等
 (対象費用)
○法人がその使用人の職務に必要な技術・知識の習得または向上のため、他の者が行う教育訓練(研修講座、講習会、研修セミナー、技術指導、各種検定試験等)に当該使用人を参加させる場合であること。
○当該他の者に対して支払う授業料等その他の費用であること。
 (対象外費用)
◆教育訓練の直接費用ではない大学への寄付金、旅費、保険料、住居費(大学へ支払う寮費等を含む)等
◆法人がその使用人に対して支払う留学期間中の人件費
◆法人がその使用人に対して支給する「報奨金」
 
D教科書その他の教材費:研修用の教材・プログラムの購入料等
 (対象費用)
○法人がその使用人の教育訓練等の用に供する教科書その他の教材(以下「教科書等」)を購入または製作した場合であること。
○資産計上される教材(減価償却資産)は、原則対象外。ただし、使用可能期間が1年未満の教材又は取得価額が10万円未満で適用年度に損金経理した教材は、対象となる。
○当該購入に要する費用または当該製作(他の者に委託した場合に限る)のために当該他の者に支払う費用であること。
○教材費は、その教材を実際に使用した事業年度ではなく、会計上、購入費として計上した事業年度の教育訓練費となる。
 (対象外費用)
◆法人が自ら教科書等(教育訓練用コンテンツを含む)を作製する場合の製作等に係る人件費、材料購入費(備品、消耗品等)、教科書等の原本等を自社で複写・印刷した場合の複写費、印刷費、用紙代等の経費等
◆教育訓練用コンテンツをソフトウェアと同時に製作・開発を委託した場合に発生する費用で、ソフトウェアと一体不可分なものとして無形固定資産として資産計上した場合は、対象外
◆人材開発部門が教育訓練等の実施に際し、内部検討するために使用する参考図書等の購入した場合
◆研修形態等の教育行為が伴っていない使用人の自己訓練のために購入する場合(例えば、使用人に書籍を買い与え、自己で知識の習得を行わせる場合等)
 
 なお、上記@ABCD共通の対象外費用は以下のようなものです。
◆法人がその使用人に支払う教育訓練期間中の人件費(日当を含む)
◆法人がその使用人に支給する教育訓練等の開催場所までの交通費、旅費(宿泊費、食費等を含む)
◆福利厚生目的など教育訓練以外を目的として実施する場合の費用
 
 その他、企業が社員の再就職・早期退職等のために行うリストラ訓練費用は含まれないでしょう。
 また、国や自治体などが企業向けに交付している人材育成支援のための補助金や助成金等の給付があった場合は、その給付の対象となった経費について教育訓練費から控除します。控除する時期は、給付の対象となった経費が発生した事業年度ではなく、経費に該当する助成金等の給付を受けた事業年度になります。
 

教育訓練費用の証明等(添付書類等)

 この制度の適用を受けようとするならば、確定申告書等に控除を受ける金額を記載し、かつ、当該金額の計算に関する明細書の添付する必要があります。教育訓練費用の根拠となる証憑等を全て添付して税務署に提出する必要はありませんが、税法上の帳簿保存義務に従って、領収書等の証拠書類を保存しておく必要があります。
 証拠書類には、@実施年月日、A教育訓練等の内容、B参加した使用人の名前、C費用支出年月日、金額・内容・相手先の氏名・名称・住所、Dその他参考となるべき事項、を記載する必要があります(措置規20の5の3C)。
 

比較教育訓練費の額が0(零)の場合

 過去2事業年度に教育訓練費の支出が全くない場合は、適用年度の教育訓練費の額がそのまま教育訓練費の超過額(増加額)となります。基本制度を選択した場合、その額の25%を税額控除することができます。一方、中小企業者の特例措置を選択した場合、教育訓練費総額の最大値である20%の税額控除を受けることができます。しかし、教育訓練費総額=教育訓練費超過額(増加額)ですので、基本制度を利用した方が有利となります。
 なお、比較教育訓練の額が1事業年度しかない場合は、その1事業年度の教育訓練費の額を比較教育訓練費の額として判断することになります。
 

税額控除限度額

 税額控除額の限度額は、適用年度の法人税額の10%に相当する金額です。限度超過額の翌事業年度への繰越はできません。
 

地方税(法人住民税の法人税割)

 中小企業者の場合は、当該制度における税額控除額の17.3%(都道府県民税5%、市町村民税12.3%(標準税率))に相当する金額が法人税割の税額から減額されます。
 

対象外となる事業年度

 人材投資促進税制が適用されない事業年度は、以下のとおりです。
 @設立の日を含む事業年度(合併による設立を除く)
 A解散の日を含む事業年度(合併による設立を除く)
 B清算中の各事業年度
 

教育訓練費についての会計・法人税・消費税処理方法

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