科目名:役員報酬と役員賞与

 会社の役員(取締役や監査役など)に支払う給与。
 

役員報酬と役員賞与の具体例

 税務では、
 役員報酬とは、役員に対する給与のうち、賞与及び退職給与以外のものをいいます(法法34)。
 役員賞与とは、名目のいかんを問わず、原則として、臨時的に支給される給与で退職給与以外のものをいいます(法法35)。
 これらの給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益も含みます。例えば、無利息又は通常金利よりも低い金利で行われた貸付けについては、通常金利との差引相当分が経済的な利益となります(詳しくは、こちらのページまで)。
 

役員報酬と役員賞与の仕訳例

 当月分の役員報酬1,000,000円を支払った。源泉所得税は150,000円である。
 役員報酬  1,000,000円    現金預金 850,000円
                     預り金   150,000円
 

役員報酬と役員賞与の法人税の取扱い

 会社法や会計では、原則として役員報酬と役員賞与を同一のように取扱っております。会社法では、役員賞与について、報酬と同様「職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益」としています(会社法361@)。これを受けて、企業会計上も報酬・賞与ともに費用処理で統一することになりました。しかし、税務では違う取扱いをします。
 税務上の役員となった場合、報酬や退職給与は不相当に高すぎない限り、全額が損金となります(税制改正あり。詳しくは、こちらのページまで)。しかし、賞与については損金とすることができません(税制改正あり)。つまり、賞与を払っても法人税などが安くなりません。
 ではなぜ、法人税法上、役員に対して支払う金銭等のうち、役員報酬は原則損金算入としますが、役員賞与は損金不算入とされるのでしょうか?それは、旧商法・旧企業会計の影響を受け、役員賞与は利益処分(利益の分配)であると考えられていることを根拠としているからです。役員報酬は業績に関係なく業務執行の対価として支払うもの、すなわち「費用」であり、役員賞与は業績向上に報いて支給するもので、すなわち「利益処分」であるということです。
 なお、賞与というと一般的には、盆、暮れ、期末等に臨時にもらうボーナスをイメージすると思います。しかし、税務上の賞与とは、もっと対象が広いです。名目のいかんを問わず、原則として、臨時的に支給される給与で退職給与以外のものとなっています。ようするに、毎月役員に対して支払う報酬が、同一の金額でないと、賞与となる部分が出てきてしまうことになります。これは、業務執行の対価(=費用)であるか、功労に報いての支給(=利益処分)であるかを表面的に判断することは難しいため、法人税法では「定期定期的な給与」か否かという形式的な基準を置いているからです。
 

役員報酬と役員賞与の消費税の取扱い

 役員報酬、役員賞与は、不課税とされていますから、課税仕入れには該当しません。
 

役員報酬と役員賞与の区分

 法人が役員に対して支給する給与のうち、報酬は、原則としてその支給すべきことが確定した日の属する事業年度の損金の額に算入されますが、賞与については損金の額に算入されません。
  
 報酬と賞与は、次のように区分されます。
 (1)あらかじめ定められた支給基準によって、毎日、毎週、毎月のように、月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給される定期の給与は報酬となります。ただし、これらの給与でも通常の昇給等以外に、特定の月だけ増額支給された場合は、その給与のうち各月に支給される額を超える部分は賞与として取り扱われます(法基通9−2−13)。
 
 (2)ほかに定期の給与を受けていない非常勤役員に対し、継続して毎年1回又は2回、一定の時期に定額を支給する規定に基づいて支給されるものは報酬となります。ただし、これが利益に一定の割合を掛けて算定されることになっている場合は賞与となります(法基通9−2−14)。
 
 (3)固定給のほかに支給される歩合給、能率給などで、使用人に対する支給基準と同じ基準によって支給されるものは報酬になります(法基通9−2−15)。
 
 (4)定時の株主総会、社員総会などで、役員報酬の支給限度額の増額改訂が決議され、その決議された日の属する事業年度開始の日以後に増額が行われることになっている場合は、その増額分として一括して支給されるものは報酬として取り扱われます(法基通9−2−9の2)。
 例えば、3月決算の会社ならば5月や6月に定時株主総会を開催し、今後1年間の役員報酬を決定します。そのため、すでに支払っている4月分・5月分の役員報酬については、改定後の報酬との差額を6月に一括支給しても、賞与とはなりません。

 税制改正あるため、変更あり。
 

過大な役員報酬等の損金不算入

 役員報酬は、原則として損金算入できますが、「不正な行為」や「不相当に高額」の場合は、損金不算入となります。
 
 (不正な行為)
 役員に対する報酬であっても、法人が、事実を隠ぺいし、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する報酬の額は、金額に関係なく、損金の額に算入されません。いわゆる裏金的な色彩が強いからです。例えば、毎月定額で30万円売上を除外し、それを役員報酬として裏で支払っても損金には算入できないということです。
 役員報酬 30万円(損金不算入)    売上 30万円(益金算入)
 
 (不相当に高額)
 また、役員報酬のうち、不相当に高額な部分の金額は、過大な役員報酬の額といい、損金の額に算入されません(法法34)。なぜならば、役員の契約は株主から委託されて会社の経営を任された「委任契約」だからです(従業員は「雇用契約」)。その任務について役員が受けるものは、委任業務の報酬となり、不相当に高額な部分は損金として認められません(従業員は労働の対価として受けとる賃金)。また、役員は会社の経営者であり、役員報酬を比較的自由に決定することができ、会社の利益を調整できるからです。
 過大な役員報酬として、損金の額に算入できないのは次のようなものです(法令69)。この場合の過大と認められる部分の判定は、法人が、事実を隠ぺいし、または仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する報酬の額を除いたところで行われます。
 (1)報酬のうち、その役員の職務の内容、その法人の収益および使用人に対する給与の支給状況、その法人と同種同規模の事業を営む法人(他社)の役員に対する報酬などからみて過大と認められる部分(いわゆる実質基準)。
 (2)定款の規定または株主総会の決議により報酬の支給限度を定めている法人が、その支給限度を超えて支給した場合のその超える部分(いわゆる形式基準)。
 ようするに、役員報酬が不相当に高額か否かは、実質基準および形式基準の双方からチェックされるということです。なお、双方ともオーバーのときは、いずれか多い方の金額が損金不算入となります。例えば、実質基準による過大報酬部分が30万円、形式基準に基づく過大報酬部分が50万円だったとすると、そのうちのいずれか多い方、すなわち、50万円が過大報酬ということになります。
 

実質基準

 報酬のうち、@その役員の職務の内容、Aその法人の収益およびB使用人に対する給与の支給状況、Cその法人と同種同規模の事業を営む法人(他社)の役員に対する報酬などからみて過大と認められる部分は、過大な役員報酬となり、損金の額に算入されません。なお、過大報酬か否かを判定する際には、経済的利益も含めたところで行い、個々の役員ごとに判定します。
 では、具体的にどの程度であれば「不相当に高額」とみなされるのでしょうか。実は、このことについて、必ずしも明確な判断基準が設けられてません。そのため、税務調査でトラブルになることが多いです。しかし、裁判で争っても納税者が勝つ可能性は難しいです。なぜなら、国税局がCその法人と同種同規模の事業を営む法人(他社)の役員に対する報酬などの詳細なデータを持っており、納税者が不利なためです。
 では、業績好調で受注増により売上や利益が急増しているような会社は、どのように役員報酬を設定すればよいのでしょうか。私が思うに、Aその法人の収益およびB使用人に対する給与の支給状況と連動すればよいと思います。すなわち、役員報酬の「伸び率」を、会社の売上高の「伸び率」や、従業員の給与の引上げや賞与などと連動させることです。
 

形式基準

 定款の規定または株主総会の決議により報酬の支給限度を定めている法人が、その支給限度を超えて支給した場合のその超える部分は、過大な役員報酬となり、損金の額に算入されません。そして、その限度の判断にあたっては、限度枠が各人別に定められているときは各人毎に判断されます。取締役・監査役の区分ごとに総額で規定しているときは総額で判断されます。なお、株主総会で総額を定める方法を採用した場合、取締役会で各人別の役員報酬を定めることが一般的です。
 定款などで支給限度額を定めていない場合には、形式基準は適用されず、上記の実質基準が適用されます。この場合は、個々の役員ごとに適正額の判断がなされます。
 また、定款などで支給限度額を定めるのは、商法上の役員のみとなります。そのため、みなし役員については、実質基準により過大か否かが決定されます。
 

使用人兼務役員の報酬

 使用人兼務役員に対する報酬は、原則として損金となります。ただし、過大報酬の部分は、損金となりません。
 
 実質基準による過大報酬の判定は、個々の役員ごとに判定しますが、その役員が使用人兼務役員である場合には、役員の職務執行の対価としての支給した報酬部分のほかに、使用人分の給与等をも含めた総額で判定することとされています(法基通9−2−5)。
 
 形式基準では、会社が定款の規定または株主総会の決議で、役員報酬の支給限度額に使用人兼務役員の使用人分の給与を含めない旨を定めている場合は、適正な使用人分給与(報酬)を除いた金額で役員分報酬が過大であるかを判定します(法令69法基通9−2−6)。
 なお、この場合の使用人分の給与(報酬)の適正額とは、次のように考えられています。
 その使用人兼務役員が現に従事している使用人としての職務とおおむね類似した職務に従事する使用人がいる場合、その使用人に対して支給した給与の額に相当する金額は、原則として、使用人分の報酬として相当な金額とされます。
 また、比準すべき使用人として適当な者がいないときは、その使用人兼務役員が役員となる直前にもらっていた給料の額に、その後のベースアップを加味して算定した金額や、使用人のうち最上位にある者に対して支給した給料の額等を参酌して適正に見積もった金額によることができることとされています(法基通9−2−7)。
 
 (例)使用人兼務役員Aの現在の報酬120万円、役員に昇格する直前の給与が50万円
    役員昇格時においてもっとも類似していた
     使用人Bの現在の給与44万円、当時の給与が40万円
 (答)ベースアップ率44万円÷40万円=1.1
    よって、Aの使用人分給与適正額は50万円×1.1=55万円
    役員報酬分は120万円−55万円=65万円
 

使用人兼務役員の賞与

 使用人兼務役員のうち、役員に対する賞与は利益の分配という考え方をとるため、損金として認められません。ただし、使用人相当部分については、その金額が妥当なものであれば、損金となります(法法35)。
 使用人部分の賞与が損金として認められるためには、次の三つの要件を満たす必要があります。
 
 1)他の使用人と同時期に支給
 使用人兼務役員に対し一般の使用人と同時に支給する必要があります。一般の使用人に賞与を支給したときに未払金として計上しておき、実際には利益処分時に支給したという場合は損金として認められません(法基通9−2−12)。
 
 2)使用人部分の賞与を損金経理
 損金経理が必要です。
 
 3)使用人部分の賞与が適正
 使用人部分の「賞与」の適正額については、「給与」と同様に、その使用人兼務役員が実際に従事している使用人としての職務と類似した仕事をしている使用人がいる場合は、その使用人に支給した賞与を使用人部分の適正額とします。また、適当な使用人がいない場合には、その使用人兼務役員が役員になる直前にもらっていた給与に、その後のベースアップを加味して算定した使用人部分給与額に他の使用人に支給した賞与割合を乗じた金額や、使用人のうち最上位にある者に対する賞与等を参酌して適正に見積もった金額によることができることとされています(法基通9−2−17)。
 

業績連動型報酬(賞与)

 現在、日本においても役員に対して、企業収益の増加率などを反映した業績連動型報酬(賞与)の導入を検討している企業が出てきました。しかしながら、現行の税務では、業績連動型では賞与となる部分が出てきてしまい、その部分は損金とすることができません。そのため、業績連動型報酬(賞与)の導入を検討しても、躊躇するというケースが多いのです。税制改正により、一部の企業には損金を認められるようになるでしょうが、大多数の会社では損金とはなりませんので、注意をしてください。
 
 

まとめ

 
役   員 使用人兼務役員 使 用 人
役員報酬
・給 料
損   金
(不相当分は
損金不算入)
損   金
(不相当分は
損金不算入)
使用人分は損金
損   金(●)
賞  与 損金不算入 損金不算入
使用人分は損金
損   金(●)
退職金 損   金
(不相当分は
損金不算入)
損   金
(不相当分は
損金不算入)
損   金(●)
  (●)使用人のうち、役員の親族などの給料、賞与、退職金については、不相当分は費用にすることはできません(法法36の2法法36の3)。
 

役員と使用人兼務役員

  税務では、商法上の役員に比べて、役員の範囲が広くなっています。詳しくは、こちらのページまで。
 また、使用人兼務役員になれない役員もいます。詳しくは、こちらのページまで。
 

税制改正

 役員報酬と役員賞与の税制改正は、こちらのページまで。
 
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